
次男を出産したあとの数年間は、振り返れば私にとって人生の中でもっとも苦しい時期のひとつだったかもしれません。
まだ上の子も小さく、年子で子どもを育てる毎日はとにかく目まぐるしいものでした。朝から晩まで子どもの泣き声や要求に応えることに追われ、外に出かける余裕もなく、自宅にこもりきりの生活が続きました。
そんな日々の中で、私の心をもっとも苦しめたのが「片付け」でした。正確に言うと、「片付けたいのに片付かない」という現実です。
散らかる現実と自分の気持ちのギャップ
当時の私は、家が整っていないことに強いストレスを感じていました。
洗濯物を畳んでも、気づけば子どもたちがその上に座って遊んでいる。
料理を作れば、シンクに洗い物がどんどん溜まっていく。
リビングの床には小さなおもちゃが散乱し、片付けても片付けてもすぐに元通りになる。
「どうして私はちゃんとできないのだろう?」
「ほかのお母さんはもっと上手にやっているはずなのに…」
そんなふうに自分を責める気持ちが膨らんでいきました。
散らかった部屋を見ると、まるで自分の未熟さやだらしなさを突きつけられているようで、どんどんイライラしてしまうのです。
子どもに優しく接したいと思っているのに、気持ちの余裕がなくて、つい強い口調になってしまうこともありました。
今振り返ると、部屋の乱れと心の乱れは完全にリンクしていたように思います。
幼児期ならではの散らかり方

幼児期の子どもたちは、とにかく「出す」のが大好きです。
ブロックを全部ひっくり返す、絵本を棚から全部引っ張り出す、洋服ダンスを開けて服を引っ張り出す…。彼らにとっては遊びであり、好奇心の表れでもあるのですが、大人にとってはそのたびに片付けなければならない「散らかし」に見えてしまいます。
さらに、集中力が短いので、一つのおもちゃを片付ける前に次のおもちゃに移ってしまう。
結果として、家の中のあちこちに違う種類のおもちゃが散乱し、どこから手をつけていいのかわからない状態になるのです。
我が家の場合は年子だったこともあり、おもちゃの量も普通の家庭の倍近くに膨れ上がっていました。
上の子のおもちゃに加えて、下の子の発達段階に合わせたものも必要になる。
リビングや子ども部屋はいつもおもちゃで溢れ返り、私自身が「片付け負債」を抱えているような感覚になっていました。
床に落ちているブロックをうっかり踏んでしまったときの痛みは、まるで心の痛みに直結するようで、ただの物理的な痛み以上に「また片付けられていない」という自己嫌悪を強めるものでした。
苦肉の片付け対策
そんな中で、私は必死に「どうしたら少しでも片付けやすくなるか」を考えるようになりました。
最初に試したのは、おもちゃを種類ごとに分けて収納する方法です。
ブロックはブロックの箱へ、人形は人形の箱へ、絵本は本棚へ…。
一見理想的に思えましたが、幼児期の子どもにはまったく合いませんでした。
遊びたいときに自分で出せない仕組みはストレスになりますし、細かく分けすぎると親も片付けが面倒になってしまうのです。
そこで発想を転換し、「ざっくり収納」に切り替えました。
大きなカゴや収納ボックスを用意し、とにかくそこに放り込むだけ。
分類は諦めて、「散らかっているものが床から消えればよし」としました。
これによって、片付けのハードルがぐっと下がり、子どもと一緒に片付けができるようになりました。
また、収納の高さにも工夫しました。
子どもが自分で出し入れできる位置に収納を置くことで、「お片付けは大人の仕事」から「一緒にやること」へと変化しました。
さらに、片付けを遊びに変える工夫も取り入れました。
こうした仕掛けは、子どもにとって片付けを「義務」ではなく「遊び」として受け入れやすくする効果がありました。
リビングを整える工夫

子どもが小さい頃は、家全体を完璧に整えるのは不可能です。
そこで私は、「最低限ここだけは」というスペースを決めました。
たとえばソファの周りやダイニングテーブルの上は必ず片付ける、寝室にはおもちゃを持ち込まない。
そうすることで、「完全な散らかり状態」にはならず、自分が心を落ち着けられる場所を確保することができました。
また、おもちゃを全て出しておくのではなく、定期的に入れ替える「おもちゃローテーション」も取り入れました。
クローゼットに一部をしまい、1〜2週間ごとに交換することで、部屋が散らかりにくくなるだけでなく、子どもにとっても「新鮮なおもちゃ」として遊びやすくなる効果がありました。
父の協力と「片付け祭り」
幸いなことに、私の父が子育てに協力してくれました。
週末には父が子どもたちを見てくれ、その間に私は集中して片付けをすることができたのです。
この時間を私は「片付け祭り」と呼んでいました。
平日はどうしても散らかりを完全には防げないのですが、週末に一気にリセットできるだけで気持ちが救われました。
「今は散らかっていても、週末に片付けられる」という安心感があったからこそ、日常の小さなイライラを乗り越えることができたのです。
片付けを通して気づいたこと
こうした試行錯誤を経て、私はようやく「幼児期は片付けても散らかるのが当たり前」という現実を受け入れることができるようになりました。
以前の私は「片付け=完璧に整えること」だと思っていました。
でも実際には、幼い子どもがいる生活ではそれは無理です。
大切なのは、「片付けを子どもにさせること」ではなく、「一緒に片付けを体験すること」。
そして「家全体を完璧に整えること」ではなく、「自分の心が休まる場所を守ること」だったのです。
散らかりにイライラしていた私が、少しずつ工夫を取り入れることで、子どもと笑いながら片付けをする時間を持てるようになりました。
そしてその経験は、子どもたちが成長した今、彼らが自分の持ち物を管理する力につながっていると感じます。
まとめ
幼児期の片付けは、本当に大変です。
どれだけ頑張っても、数分後にはまた散らかる。
イライラして、自分を責めてしまうこともあるでしょう。
けれど、それは決して自分の努力不足ではなく、子どもの発達段階によるものなのです。
工夫次第で、片付けは「戦い」から「一緒に楽しむ時間」へと変えられます。
そして、片付けの過程そのものが、子どもにとって「ものを大切にすること」「空間を整えること」を学ぶきっかけになるのです。
あの頃の私は、安らぎを求めて片付けをしていました。
その気持ちは決して間違いではありませんでした。
むしろ、その必死さがあったからこそ、今の「片付けと子育てを両立させる知恵」にたどり着けたのだと思います。
